録音した歌声のタイミングを整える「タイミング補正」。手順通りに操作すれば誰でもできる。でも多くの人がつまずくのは「どこを直してどこを残すか」という判断だ。この記事ではCubase(Pro・Artist)に搭載されているAudioWarpを使った具体的な操作手順と、判断力の育て方を現場歴30年のレコーディングエンジニア、せいいち先生が解き明かす。
タイミング補正とは何か
ピッチ補正(音程の補正)と並んでボーカル編集の基本となるタイミング補正。そもそもどんな作業なのか、せいいち先生に聞いてみた。
もっと細かく言うと、歌声の「発音のタイミング」を正しい位置に合わせていく作業なんだ。
それどころか、僕はタイミング補正をピッチ補正より先にやるんだ。
先にタイミングを直してからピッチを見る。この順番が大事なんだ。
タイミング補正が難しい2つの理由
操作自体は覚えられる。でもせいいち先生は「タイミング補正はとても難しい領域だ」という。その理由を聞いた。
理由1:自分では正しいと思っているから気づきにくい
「なんか気持ち悪い」と感じながらも、原因がタイミングだとわからない。これがタイミング補正の最初の壁だ。
だから僕はAudioWarpで本家の波形と生徒さんの波形を並べて、拡大して確認させているよ。
耳だけじゃなく目でも確認できるから、初心者にも気づきやすいんだ。
本家=正義・自分=悪と勘違いしてしまう危険があるんだ。
ピッチのときも話した通り、必ずしも本家が正解とは限らない。
「ため」や「突っ込み」は味じゃなくて表現なんだよ。
ここでせいいち先生から大切な視点が出てきた。「ずれ」と「表現」は違うということだ。
意図的であっても、なんとなくそうなっていても、感情豊かな歌いまわしになるんだ。
突っ込みはタイミングに対して少し早く歌うことで、勢いを表現したりするよ。
ジャスト:グリッドの線ぴったりのタイミングのこと。
ため:ジャストより遅らせて歌う。意図的であっても、なんとなくそうなっていても、感情豊かな歌いまわしになる。
突っ込み:ジャストより少し早く歌う。勢いや疾走感を表現できる。
全部をジャストに直してしまうと、こうした表現も消えてしまう危険がある。
「これは表現か、それとも意図していないズレか」を判断することが大切なんだ。
理由2:一音に3つのタイミングがある
もう一つの難しさは、たった一音の中にも複数のタイミングが存在することだ。
歌い始め・ピーク・歌い終わり。
「あ」という一音だけでも、この3つを考えないといけないんだよ。
一番左が歌い始め、膨らんだ頂点がピーク、しぼんで消えそうな部分が歌い終わりだよ。
どれが一番重要なんですか?
BPM設定がしっかりしているとグリッドが使えるから、ピークをどこに合わせるか判断しやすくなる。
歌い始めをジャストにするか、ピークをジャストにするかの判断も、初心者にはちょっと難しい気がするね。
まずは正解を追い求めるのではなく、直したいところを限定して直していくしかないかな。
「これは表現か、ズレか」判断に迷ったらせいいち先生に相談しよう。
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タイミング補正が終わったら、次はピッチ補正に進もう。カット・色付けの詳しい手順と、ピッチ補正のやり方は第24回で解説している。
AudioWarpでタイミング補正をする手順
では実際にどうやって作業するのか。せいいち先生に手順を教えてもらった。ピッチ補正とセットで行う作業なので、流れを整理しておこう。
↓
【1箇所目】
① ループ再生・クリックの準備(P・/・C)
↓
② サンプルエディターでAudioWarp→フリーワープON
↓
③ 前後に線を引き、動かしたい部分にも線を引いてドラッグ→ループ再生で耳確認
↓
④ タイミング補正完了 → そのままピッチ補正へ(第24回参照)
↓
【2箇所目以降】①〜④を繰り返す
カットの操作:
・Windows:Altキーを押しながらカットしたい位置をクリック
・Mac:Optionキーを押しながらカットしたい位置をクリック
カットしたら修正するイベントを右クリックしてカラーパレットから色をつけ、目印にする。
第24回で説明した手順を参照してね。
タイミング調整はイベント全体に影響が及ぶからね。
直したい部分を独立させておかないと、関係ない部分まで動いてしまうよ。
① 直すイベントをクリックしてキーボードの「P」を押す → そのイベントの範囲を選択
② 「/(スラッシュ)」を押す → ループ再生オン
③ 「C」を押す → クリック(メトロノーム)オン
ここまでが準備。準備が整ったら再生ボタンで再生を開始しよう。
操作の流れ:
① 修正したい音の少し前に線を1本引く
② 修正したい音の少し後ろにもう1本引く
③ 動かしたい部分(ピークなど)にも線を引く
④ ③の線をドラッグして、正しいと思う位置に移動させる
ループ再生しながら耳で確認して、最適な位置を探していこう。
僕はループ再生しながら耳で確認して、最適な位置を探していくよ。
ループ再生しながら確認できるのも便利そうです!
これを全部の修正箇所で繰り返したら、次はピッチ補正に移るよ。
タイミング補正の判断力はどうやって身につけるか
操作手順は覚えられる。でもタイミング補正の本当の難しさは「どこを直してどこを残すか」という判断だ。その判断力はどうやって育つのか。
レッスンで教えてもらえますか?
でも身につくのは圧倒的な試行回数なんだよ。
それらを手に入れたうえで自分の判断力を磨いていくんだ。
手順に迷う無駄をなくして、能力向上に最高のタイパを仕掛けることがレッスンの役割なんだよ。
📝 歌ってみたのタイミング補正|この記事のまとめ
- AudioWarpはCubase Pro・Artist対応(Elementsは不可)
- タイミング補正は発音のタイミングを補正する作業。ピッチ補正より先に行う
- タイミングが変わると、そこで出すべき正しいピッチ自体が変わることがあるため順番が大切
- 難しい理由①:自分では正しいと思っているから気づきにくい
- 難しい理由②:「あ」一音にも歌い始め・ピーク・歌い終わりの3つのタイミングがある
- 「ため」(ジャストより遅らせる表現)・「突っ込み」(ジャストより早く歌う表現)は直すべきズレではなく表現
- 自分の意図に沿わない部分だけを修正する
- 全体の流れ:全箇所を聴いて洗い出し・カット・色付け → 1箇所ずつ「タイミング補正→ピッチ補正」を繰り返す
- タイミング補正の手順:P・/・Cで準備→再生 → 色付けしたイベントをダブルクリック → AudioWarp→フリーワープON → 線を引いてドラッグ・耳で確認
- 判断の基準はレッスンで学べる。判断力そのものは圧倒的な試行回数で身につく
ピッチ補正のやり方は第24回で詳しく解説しています。タイミング補正と合わせて取り組んでみてください。
どこを直してどこを残すか。その判断からせいいち先生と一緒に取り組もう。
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