せいいち先生とクロちゃんのDTMを斬る 第23回|宅録環境の整え方

せいいち先生とクロちゃんのDTMを斬る 第23回|宅録環境の整え方

「歌ってみたを始めたいけど、普通の部屋で録音できるの?」そんな疑問を持つ方へ。宅録には環境音・ルームリバーブ・騒音問題という3つの壁がありますが、約3万円の対策で十分なクオリティの録音環境が作れます。現場歴30年のレコーディングエンジニア、せいいち先生が宅録環境の整え方をやさしく解説します。

目次

宅録環境は普通の部屋でも整えられる?

せいいち先生!歌ってみたって、部屋で録音できるんですか?
できるよ。
えっ、特別な部屋じゃないとダメだと思ってました!
「どんな部屋でもOK」とは言い切れないんだ。
普段の生活では気にならないエアコンの音、パソコンのファンの音、冷蔵庫の音……こういう環境音が、録音には意外と邪魔になるんだよ。
言われてみれば、エアコンってずっとゴーって鳴ってますよね。録音するとマイクに入っちゃうんだ…。
そう。他にも外からの車の音、隣の部屋からの音、スマホの通知音……全部マイクは拾ってしまうんだ。
クロちゃんは一人暮らしだよね?だったら冷蔵庫の音も要注意だよ。
冷蔵庫!ブーンってずっと鳴ってますよね。全然意識してなかったです…!
📌 環境音とは
普段の生活では気にならないが、録音時にマイクが拾ってしまう生活音のこと。エアコン・パソコンのファン・冷蔵庫・外の車の音・隣室からの音・スマホの通知音などが代表例。

宅録環境を整える前に知っておきたい3つの問題

宅録をするにあたって、考えなければいけない問題が3つあるんだ。
①環境音 ②ルームリバーブ ③騒音問題 だよ。
ルームリバーブってなんですか?
お風呂で歌うと声が響いて気持ちいいだろ?あれと同じ現象が部屋でも起きているんだ。
引っ越してきたばかりで部屋に何もなかったとき、声がなんか響いてなかったかな?
あ!そういえば引っ越してきたばかりのとき、声が響いてた気がします。今は家具があるから全然気にならないですけど…。
そう、家具があるとルームリバーブが自然に抑えられているんだよ。
これが録音されてしまうと、くっきりした声と遅れて戻ってきた声がもやっと混ざって録音されてしまうんだ。
📌 ルームリバーブとは
部屋の壁や床・天井で音が反射して戻ってくる現象。録音するとくっきりした声と反射した声が混ざり、もやっとした音になってしまう。家具が多い部屋は自然に抑えられているが、録音時は意識的な対策が必要。
3つ目の騒音問題っていうのは?
自分が歌うことによる近所への音漏れだよ。
マンションや集合住宅だと特に気をつけないといけない。
なるほど。環境音・ルームリバーブ・騒音問題の3つが宅録の課題なんですね。それぞれ対策はあるんですか?
あるよ。ただひとつ大事なことを先に伝えておくと、完璧な環境を作ることは現実的ではないんだ。
6畳の部屋を完全防音にしようとすると500万円くらいかかるんだよ。
500万円!?それは無理ですね…。
だから「できる対策を組み合わせる」という考え方が大事なんだ。
ひとつの対策で完璧にしようとするのではなく、複数の対策が互いを補完し合う関係になっているんだよ。

宅録の環境音・ルームリバーブ対策5選

環境音とルームリバーブの対策は共通しているよ。ひとつずつ説明するね。

①可能なら電源を切る
エアコンを止めるなど、録音の間だけでも電源を切れるものは切ってしまおう。

②切れない場合はタオルや毛布でノイズを軽減する
冷蔵庫の裏側にバスタオルをかける、壁に洋服をかける、カーテンを閉めるといった方法が効果的だよ。

③ボーカルブースを設置する
④吸音材を貼る
⑤ミックス段階でソフトウェアで処理する
①②はわかります!ボーカルブースってなんですか?
本格的なものではヤマハの防音室、DIYで作る人もいるよ。
簡易的なものとしてはリフレクションフィルターの活用もあるね。
📌 リフレクションフィルターとは
マイクの後ろに設置して、反射音の回り込みを防ぐアイテム。環境音の軽減にも効果がある。専用の金具がついているため、正しい取り付け方しかできない設計になっており、初心者でも迷わず設置できる。せいいち先生おすすめの「RF-X」は税込16,400円前後。
吸音材っていうのはどういうものですか?
素材はいろいろあるけど、音を反射しにくくする効果があるんだ。防音にも多少効果があるよ。
Amazonに安いものがたくさんあるから、そこで探すといいよ。色もデザインもいろいろあってね。
インテリアとして楽しみながら録音環境も整えられるんですね!⑤のソフトウェアで処理というのは?
RXやSpectral Layersというソフトで、録音後にノイズを取り除くことができるんだ。
ただし重要なのは「ソフトで消せるからいいや」ではなく、できる対策を先にやったうえでソフトも使うという考え方だよ。
📌 RX・Spectral Layersとは
録音後の音声からノイズや不要な音を取り除く専用ソフトウェア。RXはiZotope社、Spectral LayersはSteinberg社が開発。エアコンの音・外の雑音など、録音に混ざってしまった環境音を後から軽減することができる。ただしあくまでも補助的な手段であり、録音前の対策を省いてよい理由にはならない。
🎙️ 現場エンジニアの視点
完璧な環境を作ることよりも、できる対策を積み重ねることが大事。「①電源を切る」「②タオルで覆う」「④吸音材を貼る」という低コストの対策だけでも、録音のクオリティは大きく変わる。ソフトウェアはあくまでも仕上げの手段。

初心者の宅録環境整備はこれだけでOK!コスパ最強の組み合わせ

初心者には、リフレクションフィルターと吸音材の組み合わせがおすすめだよ。
自分で設置すれば約3万円で収まるし、何より見た目がプロっぽい。テンションが上がるよ。
3万円で収まるんですね!部屋がスタジオっぽくなったらテンション上がりますよね。リフレクションフィルターはどこに置けばいいですか?
マイクの後ろだよ。専用の金具がついているから、正しい付け方しかできない感じで迷わないよ。
私はRF-Xという商品しか使ったことがないんだけど、これがすごく良くてね。出張レコーディングでいろんな現場に行くんだけど、RF-Xのおかげで一度もNGを出したことがないんだよ。
どんな環境でもRF-X一つで対応できちゃうってすごいですね!吸音材はどこに貼ればいいですか?
部屋の四隅と、自分が歌うときの口の高さに合わせて壁4面にぐるっと一周貼るといいよ。
私はAmazonの安いものを1年に1回くらい張り替えてるよ。色に飽きるのとほこり対策を兼ねてるんだ。
1年に1回でいいんですね!色もいろいろあるなら楽しいですね。
💡 お金をかけない方法もある
洋服をハンガーで壁面にかける、タオルや毛布をうまく使うといった方法も地味ながら効果的。先生いわく「それが面倒だからRF-Xを使っている」とのこと。手軽さを求めるならリフレクションフィルター、予算を抑えたいなら身近なアイテムの活用から始めてみよう。

【約3万円の内訳目安】
・RF-X(リフレクションフィルター):約16,400円
・吸音材(Amazonの安いもの30〜50枚):約5,000〜10,000円
部屋の広さによって枚数は変わるが、合計で約3万円以内に収まる計算だ。

宅録の騒音問題はどうすればいい?

騒音問題の対策はどうすればいいですか?
正直、ほとんど対策できないんだよね。吸音材などのルームリバーブ対策が多少効果ある程度かな。
根本的な解決策はカラオケボックスやリハーサルスタジオを利用するか、鉄筋マンションに住むかだね。
カラオケボックスやスタジオで録音するのって、実際に多いんですか?
実際には一番多い気がするよ。部屋を対策するにも費用がかかるから、結果的にカラオケボックスの方がコスパが高いケースも多いんだ。

カラオケボックス・スタジオで録音するときの注意点

カラオケボックスで録音する場合は2つ注意点があるよ。

ひとつは隣の部屋からの音漏れ。これは対処できないから、スタッフさんに「隣に客が入っていない部屋をお願いします」と事前に伝えるしかない。

もうひとつはコンセントの確認。機器を守るためにコンセントを隠してあるカラオケボックスもあるから、場所の確認と使用許可を事前にとるといいよ。
なるほど!スタジオの場合はどうですか?
📌 レコーディングスタジオとリハーサルスタジオの違い
レコーディングスタジオは、録音に最適化された部屋。防音・吸音が徹底されており、まさに500万円かけて目指す環境そのもの。
リハーサルスタジオは、バンド練習などを主な目的として作られた部屋。録音もできるが、録音専用に設計されているわけではないため、楽器の共鳴や音の反射など、録音時に注意が必要な点がある。
レコーディングスタジオは問題ないけど、リハーサルスタジオは注意が必要だよ。

他の楽器が置いてあることが多くて、歌声でピアノの弦が共鳴したり、シンバルやスナッピーが響いたりして録音に混ざることがあるんだ。

あと鏡がある部屋も要注意。音が反射して、ルームリバーブと同じ現象が起きるんだよ。

リハーサルスタジオを使う場合は「ボーカルのセルフレコーディングに対応していますか?」とスタッフに事前確認するといいよ。
📌 スナッピーとは
スネアドラムの裏側に張られた細い金属の線(響き線)のこと。スネアドラム独特の「スナッ」という響きを生み出している。リハーサルスタジオにあるスネアドラムのスナッピーは、大きな音(歌声など)に反応して振動し、その音が録音に混ざってしまうことがある。
鏡も音を反射するんですね!事前確認が大事なんですね。

ベッドルームレコーディングでグラミー賞を受賞した例も

実は「ベッドルームレコーディング」というムーブメントがあってね。
アメリカの人気シンガーソングライター、ビリー・アイリッシュがお兄さんのFinneasと自宅の寝室でレコーディングしたアルバムがグラミー賞を受賞した例もあるんだよ。
えーっ!自宅の寝室でグラミー賞!?それは夢がありますね…!
完璧な環境がなくても、工夫次第でプロクオリティの録音は十分できるということだよ。
大事なのは完璧を目指すことじゃなくて、できる対策を積み重ねること。そこから始めていこう。

歌ってみたの録音前にやっておくべき準備については第10回で詳しく解説しています。

📄 関連記事を参照
せいいち先生とクロちゃんのDTMを斬る 第10回|歌ってみた録音簡単5step
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📝 宅録環境の整え方|この記事のまとめ

  • 宅録で考えるべき問題は「環境音」「ルームリバーブ」「騒音問題」の3つ
  • 完璧な環境を作ることは現実的ではない(6畳の防音室で約500万円)
  • できる対策を組み合わせることが大切。対策はお互いを補完し合う
  • コスパ最強はリフレクションフィルター+吸音材の組み合わせ。約3万円で収まる
  • 吸音材は部屋の隅と口の高さ全周に貼る。Amazonの安いもので十分
  • お金をかけない方法として洋服・タオル・毛布の活用も効果あり
  • 騒音問題の根本解決はカラオケボックス・スタジオの活用が現実的
  • カラオケボックスは隣部屋の確認・コンセントの使用許可を事前に
  • リハーサルスタジオは楽器の共鳴・鏡の反射に注意。セルフレコーディング対応か事前確認を

歌ってみたの実際の録音のやり方は第11回で、現場エンジニアの視点から詳しく解説しています。

📄 関連記事を参照
せいいち先生とクロちゃんのDTMを斬る 第11回|歌ってみた録音のやり方|現場エンジニアが教える3つの秘密
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この記事を書いた人

せいいち先生
DTMは、まず手順。
センスや感覚は、その後でいい。
1人でも多くの人と、音楽の世界を歩きたい。
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