せいいち先生とクロちゃんのDTMを斬る 第12回|歌ってみた上達の近道|孫子に学ぶ録音術

せいいち先生とクロちゃんのDTMを斬る 第12回|歌ってみた上達の近道|孫子に学ぶ録音術

録音した。でも「これでいいのか」がわからない——。
自分の歌を評価することが難しいと感じているなら、それは漠然と評価しているからだ。
孫子の教えが、歌ってみたの上達に直結している。

自分の歌に向き合う

せいいち先生!録音できました!次は何をすればいいですか?
次というより、録音のプロセスの中で重要な考え方をお話しするよ。
以前クロちゃんが自分の歌を評価することが難しいと言っていたよね。
今日はそのあたりの話をしたいんだ。
「合格点って自分でわかるものなんですか?」って言ってたやつですね!あれってどう考えればいいんですか?
まず聞くけど、クロちゃんは自分の歌を聴いたことはあるかな?
録音して聴き直したことはあります!でもなんか恥ずかしくて、あんまりちゃんと聴けてないかもしれないです…
そうなんだ。まずは自分の歌に向き合うことが重要なんだよ。
何度も聴いて自己分析する。これが上達の入り口だ。
でも自己分析って何を分析すればいいんですか?
歌を漠然と評価するから難しいんだよ。
声やピッチなど要素ごとに判断することで、自分の歌に対する評価の解像度が爆上がりするんだ。

レーダーチャートで評価の解像度を上げる

要素ごとってどうやって分ければいいんですか?
僕が生徒に教えているのはレーダーチャートでの評価だよ。
声・歌い方・音程・リズム・表現力・好き、という6つの項目を5段階で評価してもらっているんだ。
またそれぞれの項目に一言メッセージもつけてもらっているよ。
「好き」っていう項目があるのが面白いですね!これはどういう意味ですか?
自分がどのくらい好きか判断する癖をつけるためのものだよ。
一言メッセージはどんなことを書けばいいんですか?
例えば「アイドル様!と歌っているところの気合が好き」とか「ラップの音程が甘い」とか。
なぜその点数になったかを覚書するイメージだよ。
点数の理由を言語化しておくことで、次の録音で何を意識すればいいかがわかるんですね!これって毎回やるんですか?
慣れるまではやっていくと成長が速いよ。
やがて頭の中で自然とできるようになるんだ。
僕は録音のたびに10枚ほど印刷して持っていくようにしているよ。
10枚!それは一人で全部書くんですか?
自分だけではなくスタッフにも書いてもらうんだ。
バンドなんかだとメンバーにも聞いてもらうし、マネージャーやディレクターとも共有するよ。
一人でやる場合は友達に聞いてもらうのが一番いい。
お願いできるならレーダーチャートで書いてもらうと自分の評価と比べられるから面白いよ。
💡 レーダーチャート評価シートの使い方
評価項目 5段階評価 一言メッセージの例
1〜5 声の張りが出てきた
歌い方 1〜5 フレーズの入り方が自然
音程 1〜5 ラップの音程が甘い
リズム 1〜5 サビ前のタメが気持ちいい
表現力 1〜5 アイドル様!の気合が好き
好き 1〜5 自分らしさが出ている

ディレクションは常に議論の対象

レーダーチャートってディレクションとも関係あるんですか?
ディレクションは常に議論の対象なんだよ。
もちろん方向転換もある。
例えば歌っているときに偶然、ディレクションとは違う方向性のテイクが録れたとするね。
しかもクロちゃんがとても気に入っている。
その時どうする?
ディレクションとは違うけど気に入ったから…勝手にそっちを使っちゃいます!
勝手に変更してはだめだよ。
正解はディレクターに直談判して、会議をやり直すことだ。
セルフプロデュースなら自分の中でもう一度ディレクション会議を開いて、変更するメリットとデメリットを精査する必要があるんだよ。
例えばどんな状況でメリット・デメリットを考えるんですか?
例えばAは歌がうまいが方向性とは微妙に違う、Bは方向性はあっているが歌がいまいち、という状況になったとき道は3つある。
Aを使う・Bを使う・録り直す、だ。
どの道を選んでもメリットとデメリットがあるから、慎重に考える必要があるということだよ。
せいいち先生はどの道を選ぶことが多いんですか?
基本的には録り直しだね。
方向性を変えると、積み上げてきたものを全部やり直さないといけなくなるから。
ただAのいいところを参考にしながら、ディレクションを守った上でもう一回録音するというのがベストだよ。
あ、今クロちゃん「歌がうまい・下手」じゃなくて「ディレクションに合っているか・合っていないか」で判断してますね!
そう、気づいたかな。
レーダーチャートで自己分析してディレクションを意識して評価する——自然につながっただろ?
💡 AとBで迷ったときの3つの道
  • Aを使う(歌はうまいが方向性がズレている)→ ディレクションの変更会議が必要
  • Bを使う(方向性は合っているが歌がいまいち)→ 完成度を下げる可能性がある
  • 録り直す(推奨)→ Aのいいところを参考にしながらディレクションを守って録音する

ディレクション会議について詳しくはこちらを参考にどうぞ。

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第9回|歌ってみたのやり方より先に決めること|プロが毎回やる秘密会議
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孫子に学ぶ録音術

せいいち先生、今日教えてもらったことって全部つながってると思うんですけど、一言でまとめるとどういうことになりますか?
自分で判断することを積み重ねることで、自分の歌に対する理解・武器・弱点がわかってくるよ。
わかってしまえば勝ったも同然。
どんどんいい作品を作ってください。
「勝ったも同然」って言葉、かっこいいです!これって何かの言葉に似てますか?
孫子の「彼を知り己を知れば百戦危うからず」だね。
己=自分の歌を知ることがレーダーチャートの自己分析。
彼=観客(クライアント)を知ることがディレクション会議で「誰に届けたいか」を決めること。
両方を知れば無敵なんだよ。
ディレクション会議が「彼を知る」で、レーダーチャートが「己を知る」——第9回からずっと全部つながってたんですね!
無駄なことは教えていないよ。
すべてのことに理由があって、結果を生む。
結果的につながって見えるだけだよ。
ありがとうございました!自分の歌を知って、届けたい相手を知って、無敵になります!
📖 孫子「彼を知り己を知れば百戦危うからず」と歌ってみた

己を知る=レーダーチャートで自分の歌を要素ごとに自己分析する
彼を知る=ディレクション会議で「誰に届けたいか」を明確にする
両方を知ることで、録音のたびに迷わず判断できるようになる。

録音後のエディット作業についてはこちらも合わせて読んでみてください。

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第14回|歌ってみたのエディットとは何か
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✅ この記事のまとめ
  • 歌を漠然と評価するから難しい。要素ごとに分けることで評価の解像度が爆上がりする
  • レーダーチャートの6項目(声・歌い方・音程・リズム・表現力・好き)を5段階+一言で評価する
  • 慣れるまでは毎回やると成長が速い。やがて頭の中で自然とできるようになる
  • ディレクションは常に議論の対象。変更するときは会議をやり直してメリット・デメリットを精査する
  • AとBで迷ったら基本は録り直し。方向性を変えると積み上げてきたものを全部やり直さないといけなくなるから
  • 己(自分の歌)を知り、彼(観客)を知れば無敵——孫子の教えが歌ってみたに直結している

自分の歌を一緒に評価しませんか。
レーダーチャートの使い方、ディレクションの相談——やさしいDTM道場で気軽に話しかけてください。

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この記事を書いた人

せいいち先生
DTMは、まず手順。
センスや感覚は、その後でいい。
1人でも多くの人と、音楽の世界を歩きたい。
わからないことは何でも聞いてください。
現役30年のプロが、あなたに伴走します。

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