せいいち先生とクロちゃんのDTMを斬る 第9回|歌ってみたのやり方より先に決めること|プロが毎回やる秘密会議

せいいち先生とクロちゃんのDTMを斬る 第9回|歌ってみたのやり方より先に決めること|プロが毎回やる秘密会議

機材が全部揃った。さあ録音しよう——待って。
その前にやることがある。プロが毎回かならずやっている、たった一つのことだ。

歌ってみたには2種類のゴールがある

せいいち先生!機材も全部揃いました!何から始めればいいですか?
おめでとう、いよいよ制作だね。
でもその前に決めておいた方がいい重要なことがあるんだ。
え、なんですか?気になります!
それは歌ってみたのゴールの話なんだ。
クロちゃんが好きな曲のカラオケに合わせて自分の歌を録音する——ここまでは理解してるよね。
はい!それが歌ってみたですよね!
ではその歌は本家アーティストに限りなく近づけたいのか、クロちゃんの良さを前面に出したいのか——この2つでゴールも過程も全く変わってくるんだよ。
考えたことはあるかな?
全然考えてなかったです!どっちでもいいと思ってました…その2つって何か違うんですか?
全然違う。
わかりやすく言うと、1つ目は物まねがしたいということ——悪い意味ではないよ。
2つ目は自分の歌を届けたい、ということだ。
同じ「歌ってみた」でも、目指すゴールが根本から違うんだ。

機材の準備が整ったら、録音の流れも確認しておきましょう。

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第10回|歌ってみた録音簡単5step
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ディレクションとは何か

ゴールが違うと、制作の進め方も変わってくるんですか?
変わってくるよ。それがディレクションの話なんだ。
僕のところにも2種類の相談がよく来るんだけど——
「本家のようになりたいけどどこをどうすればいいですか?」という相談と、「もっと自分らしさを伝えるにはどうしたらいいですか?」という相談だ。
これはディレクションが違うから、アドバイスの内容も全く変わってくる。
ディレクションってどういうことですか?
どのような歌ってみたを作るか、間違った方向に行っていないか——そういった制作の方向性のことだよ。
物まねを目指している場合、ディレクションのわかりやすい基準は「本家と寸分たがわないか」だよね。
音程、タイミング、声質がお手本通りかを判断すればいい。
じゃあ自分の歌を届けたい場合は?
自分の歌い方が合格点かどうか、という判断基準になってくる。
自分の歌に向き合って、自分で判断するしかない。
え、それって難しくないですか?合格点って自分でわかるものなんですか?
少し矛盾しているよ。
歌い終わった後に自分の歌を聴きなおせば、良いか悪いかくらいは判断できるよね?
あ…確かに!「なんか違う」とか「いい感じ」って思うのはできます!それがもう判断してるってことですか?
そう。おそらくクロちゃんは判断が難しいと思っているのではなく、無意識のうちに「正解」を求めているんだと思う。
でも自分流の歌に正解を外に求めた瞬間、自然と本家に近づけようとしてしまうんだよ。
うっ…確かにそうかもしれないです。「これで合ってるの?」って正解を誰かに教えてもらおうとしてました。
みんなそうなんだよ。「褒められたい、でも正解がわからない、とりあえず本家に近づけておこう」——自然とそうなってしまう。
だから方向性を最初に決めておかないと、必ず物まねの方向に流れていくんだ。
それでよければいいんだけどね。
自分の感覚を信じることが大事ってことですよね?
それがアーティストへの第一歩なんだよ。
僕はこう思っているんだ——「大好きな曲を、クロちゃん流で歌ってみた」。
それがクロちゃん流歌ってみたの醍醐味だと思う。
📖 用語解説:ディレクション

制作の方向性を定め、間違った方向に進んでいないかを確認する作業のこと。
プロの現場では録音前に必ずディレクションを確認する。
「誰に届けたいか」「どんなふうに歌うか」「どんな自分で歌うか」を言語化することがディレクションの核心だ。

プロが毎回やる秘密会議の中身

方向性って最初に決めておかないといけないんですか?
決めておいた方がいいよ。ディレクションに直結するからね。
プロの現場では録音前に必ずやることがある。
試しに僕がディレクターをやってみようか。
お願いします!
クロちゃん、次の歌ってみた投稿、何を歌うか決まった?
えっと…YOASOBIの「アイドル」を歌おうと思ってます!
いいね。どんなお客さんに喜んでほしいのかな?
YOASOBIが好きな人に聴いてほしいです!
なるほど。ではどんなふうに歌うつもり?
えっと…かっこよく歌いたいです!
カッコいいアイドルってどんな感じか言語化してみよう。
さらにカッコよさという言葉も具体的に言語化してみよう。
うーん…力強い感じ?柔らかい感じ?あれ、カッコいいにもいろいろあるんですね!
そうだね。一つアイデアがあるんだけど——アイドルの追っかけが歌うアイドルはどうかな?
あ!それめちゃくちゃいいですね!
アイドルを全力で応援してる側の人が歌うアイドルって、すごくリアルで熱量がありそう!
それがクロちゃん流になりますよね!
これがディレクション会議だよ。
「誰に」「どんなふうに」「どんな自分で」歌うかを言語化する。
これを一人で毎回やるんだ。
プロの現場でこれをやらないのを見たことがないかもしれない。
一人でこれをやるんですか!
でもこれがないと確かに本家に近づけとこうってなっちゃいますよね。
ログポーズが溜まっていないのにグランドラインに出るみたいな…?
そうそう、まさにそんな感じだね(笑)。
地図なしで航海に出ても、たどり着けない。
💡 ディレクション会議で考える3つのこと
  • 誰に届けたいか——どんな人に聴いてほしいか
  • どんなふうに歌うか——どんな雰囲気・感情・キャラクターで歌うか
  • どんな自分で歌うか——「〇〇な自分」を設定することで歌い方が自然と決まってくる

一人でできないときの裏ワザ

せいいち先生、ディレクション会議って一人でやるのが難しそうなんですけど、うまくできないときはどうすればいいですか?
いい質問だね。僕はClaudeをおすすめしているよ(笑)。
生成AIと壁打ちするんだ。無料の範囲で十分だと思う。
AIに話しかけながらアイデアを整理していく感じですね!「誰に届けたいか」「どんなふうに歌うか」って一人で考えるより、AIに話しかけながら言語化する方がやりやすそう!
そう。自分の頭の中にあるイメージを言葉にしていく作業だから、相手がいた方がやりやすい。
物まねを目指している人は物まねをとことんやる。自分の歌を世の中に届けたい人は、正解を決めることから逃げずに判断する。
どちらが正解ではないけれど、自分がどっちをやりたいかをちゃんと決めておくことが大事なんだよ。
なんかそれだけでもう録音したくなってきました!

録音のやり方については次の記事で詳しく解説しています。

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第11回|歌ってみた録音のやり方|現場エンジニアが教える3つの秘密
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✅ この記事のまとめ
  • 歌ってみたには「物まね(本家再現)」と「自分の歌を届ける」の2種類がある
  • 方向性を決めないと、自然と物まねの方向に流れていく(正解を決めることから逃げるから)
  • プロは毎回録音前に「誰に・どんなふうに・どんな自分で歌うか」を言語化するディレクション会議を行う
  • 一人でうまくできないときは生成AIとの壁打ちが有効
  • 自分の感覚で「良い・悪い」を判断できることが、すでにアーティストの第一歩

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「自分はどちらの歌ってみたをやりたいのか」——そこから一緒に考えます。

やさしいDTM道場の門をたたく

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この記事を書いた人

せいいち先生
DTMは、まず手順。
センスや感覚は、その後でいい。
1人でも多くの人と、音楽の世界を歩きたい。
わからないことは何でも聞いてください。
現役30年のプロが、あなたに伴走します。

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