せいいち先生とクロちゃんのDTMを斬る 第15回|マスタリングとは何か

せいいち先生とクロちゃんのDTMを斬る 第15回|マスタリングとは何か

「マスタリング」という言葉はよく聞くけど、実際に何をしているのかよくわからない…という人は多いはず。
今回はキャリア約30年の現場エンジニア・せいいち先生に、マスタリングの基本から音圧の考え方、YouTubeのノーマライズ問題まで根掘り葉掘り聞いてみました!

マスタリングって何をする作業?

せいいち先生、「マスタリング」ってよく聞くんですけど、そもそも何をする作業なんですか?
音圧、わかりやすく言うと音量の密度を調整する作業だよ。
「音量の密度」を調整するんですね!
音圧を上げると、具体的にどんな風に聴こえ方が変わるんですか?
聴感上の音量が上がるけど、ダイナミクスはなくなっていくね。
ちょっと待って…ダイナミクスってなんですか?
わかりやすく言うと抑揚かな。
音の強弱のことだよ。
じゃあ音圧を上げすぎると、強弱がなくなって平べったい感じの音になっちゃうってことですか?
極端に言うとそうだね。
だからマスタリングはダイナミクスを残しながら音圧を上げる作業ともいえるよ。
📖 用語解説:ダイナミクス

音の強弱・抑揚のこと。音圧を上げすぎるとダイナミクスが失われ、音が平べったく聴こえるようになる。マスタリングはダイナミクスを保ちながら音圧を上げるバランスが重要。

ミックスとマスタリングの関係・作業フロー

マスタリングって他にも何かやることはあるんですか?
やる人もいるけど私はやらない派。
ミックスもマスタリングも自分でやるからなんだ。
ミックスもマスタリングも自分でやるから、マスタリングで余計なことをしなくていいってことですか?
そうだね。
ミックスでダイナミクスや仕上がりの方向性をしっかり設計、マスタリングで音圧を稼ぐ、問題があればミックスにまた戻る、再度マスタリングという作業フローだね。
ミックスとマスタリングを行ったり来たりしながら仕上げていくんですね!
「問題がある」って、どんなときに感じるんですか?
例えばミックスの時にはまとまっていた管楽器が、マスタリングを終えたときに異常な自己主張をしているとか(笑)。
💡 マスタリングはミックスの粗を拡大する

ミックスでバランスよくまとまっていたのに、マスタリングで音圧を上げた瞬間に特定の楽器が飛び出してくることがある。これはマスタリングが「ミックスの粗を拡大する」作業でもあることを示している。だからこそミックスの設計が重要。

そういうのって、マスタリング前には気づけないものなんですか?
そうだね、経験で何となくはわかるけど今でもたまにやらかしたーってなるよ。

ミックスの基本についてはこちらも参考にどうぞ。

📄 関連記事を参照
第20回|歌ってみたの音量バランスってどうやるの?現場エンジニアが教えるずるいミックス方法
👉 続きを読む

マスタリングに使うソフト・マキシマイザーとは

30年のキャリアでもやらかすことがあるんですね!笑
マスタリングってどんなソフトを使うんですか?
私はCubase付属のマキシマイザーだけだね。
え、付属のソフトだけでできちゃうんですか!?
専用の高級ソフトを使うイメージがあったんですけど…付属だけで十分なんですか?
やることを増やすよりも、目的が明確ならこれで十分だよ。
ちなみにマキシマイザーって何をするソフトなんですか?
音圧を上げていくソフトだね。
使ってみるとわかりやすいけど、上げれば上げるほど音が飽和してる感じがするよね。
ダイナミクスの消失もわかりやすいよ。

LUFSとは?完成の判断基準

マスタリングって、どのタイミングで「これで完成!」って判断するんですか?
私の場合は目標ダイナミクスを決めるね。
例えば配信なら-14LUFS、ジャンルに合わせて-8LUFSということだよ。
LUFSってなんですか?
LUFSはLoudness Units Full Scaleの略で、平均的な音量を表す単位だよ。
どこで発表するかによって目標の数値が変わってくるね。
📖 用語解説:LUFS(ラウドネスユニット)

LUFS(Loudness Units Full Scale)は、人間の聴感に近い形で音量を測る単位。数値はマイナスで表され、0に近づくほど音が大きいことを意味する。YouTubeの推奨値は-14LUFS、Spotifyも-14LUFS、CDは-8〜-10LUFSが一般的な目安。

YouTubeのノーマライズ問題、本当に怖い?

YouTubeに基準値を超えてアップしたらどうなるんですか?
ノーマライズされるんだ。
YouTubeが自動で平均的なラウドネス値に調整してくれるということだね。
基準値の-14LUFSを超えていたら自動で下げられるよ。
じゃあせっかく音圧を上げても、YouTubeが自動で下げちゃうんですね!
最初から-14LUFSに合わせてマスタリングした方がいいってことですか?
ところがそうでもないんだよ。
ここからは私の考えだから参考程度にお願いね。
昔の曲はYouTubeがなかったから、もっと大きなラウドネス値で作られているんだよ。
で、その曲がYouTubeでノーマライズされてアップされているんだけど、実は悪影響が少ないんだ。
この事実から、そんなにノーマライズを怖がる必要がないんじゃないかということが言いたいんだよ。
💡 せいいち先生の見解:ノーマライズは怖くない

「-14LUFSに合わせなきゃ!」と必死になっている人は多いが、昔のCD音源もYouTubeでノーマライズされながら問題なく聴かれている。重要なのは数値合わせより「曲に合った音圧調整」というのがせいいち先生の考え。

せいいち先生の音圧論|カッコいい音の判断基準

じゃあ「曲に合わせた音圧調整」って具体的にどういうことですか?
音量が変わると聴こえ方や質感も変わるんだよ。
スピーカーがわかりやすいけど、ベースやキックが空気を震わせる感覚があるよね。
だから音圧ベースではなく、ミックスが保てる最大値で音圧を作る感じなんだ。
それって耳で判断するんですか?
私は耳。
これってカッコいいか感動するかなんだよ。
メーターでも確認はできるけど、数値目標ではないんだ。

マスタリングで最も大事なこと|やりすぎない

他にマスタリングで気をつけていることはありますか?
やりすぎないだね。
独りよがりになっちゃうから。
情熱的な自分と客観的な自分の両立が重要だと思う。
どうやって客観的になるんですか?
作ってるときは情熱的に、確認時は冷静にだね。
お金を稼ぐプロデューサーになりきってダメ出しする(笑)。

エディットの判断力についてはこちらも参考にどうぞ。

📄 関連記事を参照
第14回|歌ってみたのエディットとは何か
👉 続きを読む

初心者へのアドバイス|まずOzoneを使ってみよう

では最後に、マスタリングを学びたい初心者にひとことアドバイスをお願いします!
まずは難しく考えずに曲がカッコよくなる音圧を探しましょう。
難しかったらOzoneなどのAIマスタリングツールを使うこともお勧めですよ。
OzoneはiZotope製のAIマスタリングツールで、AIが自動で音圧や音質を分析して最適な設定を提案してくれるから初心者でも取り組みやすいよ。
✅ この記事のまとめ
  • マスタリングとは音圧(音量の密度)を調整する作業
  • 音圧を上げると聴感上の音量は上がるが、ダイナミクス(抑揚・強弱)が失われていく
  • マスタリングはダイナミクスを残しながら音圧を上げる作業ともいえる
  • 作業フローはミックス→マスタリング→問題があればミックスに戻るの繰り返し
  • 使用ソフトはCubase付属のマキシマイザーのみ。目的が明確なら付属で十分
  • LUFSとは平均的な音量を表す単位(Loudness Units Full Scale)。YouTubeの推奨値は-14LUFS
  • ノーマライズは必要以上に恐れなくていい(せいいち先生の見解)
  • 重要なのは曲に合わせた音圧調整。完成の判断基準は「カッコいいか・感動するか」
  • やりすぎない。情熱的な自分と客観的な自分の両立が大事
  • 初心者はまずOzoneなどのAIマスタリングツールを試してみよう

マスタリングのことをもっと詳しく知りたい方は、やさしいDTM道場で気軽に相談できます。

やさしいDTM道場の門をたたく

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!

この記事を書いた人

せいいち先生
DTMは、まず手順。
センスや感覚は、その後でいい。
1人でも多くの人と、音楽の世界を歩きたい。
わからないことは何でも聞いてください。
現役30年のプロが、あなたに伴走します。

目次